昨日、友人から電話がかかってきた。
同窓会で久しぶりに再会した仲間たちと、定年を機に時折一緒に旅行しようという話になったらしい。
「北海道旅行はどう思う?」そんな相談を受けて、私は去年6月に訪れた道南のルートや、千歳から入って3泊4日で巡るプランなどを提案した。
ふと思い出した山口での日々
話しながら、ふと前日に参加した山口でのワークショップのことが頭をよぎった。
山口県は、中学の修学旅行で萩を訪れて以来、5年ほど前にも友人と車で立ち寄ったことがある。
だから県の全体像は何となく分かっていたつもりだった。
でも、今回のワークショップでゆっくりと県内を巡る機会を得て、初めて気づいたことがある。
ワークショップ前日の萩見学には仕事で参加できなかったけれど、お昼休みを活用して瑠璃光寺を訪ねたり、地元の友人たちが「ここに来たら絶対食べて」と勧めてくれるソウルフードやラーメン屋さんを巡ったりした。
中でも、初めて口にした生ういろうの味は、今も鮮やかに思い出せる。
ガイドブックには載っていない、その土地の人だけが知っている名物。
観光地としては有名ではないけれど、「ここだけは立ち寄ってほしい」と紹介してくれる場所。そんな心のこもったおもてなしが、何よりも温かく心に響いた。
私たちはつい、インスタ映えする場所や有名な観光地に心を奪われがちだ。でも結局、何が一番心に残るかといえば、その土地ならではの温かいおもてなしや、郷土の味に触れた瞬間なのだと思う。
友人の話をよく聞いてみると、同窓会で再会したメンバーは全国各地に散らばって暮らしているという。
心に残るおもてなし
「それなら」と私は山口での経験を交えて提案してみた。「それぞれの友人が住む地域を訪ねていく旅はどう? 自分の町を紹介するのも楽しいと思うよ」
すると友人も「確かに! 自分の住んでいる町を案内するって面白そう」と、話が盛り上がった。
山口で私の心に最も残ったのは、確かに瑠璃光寺の美しさもあったけれど、何よりも皆で食べに行った「瓦そば」だった。
熱々の瓦の上に茶そばが盛られ、手に取った瞬間、お茶の香りがふわっと立ち上る。瓦で焼かれた部分はパリパリとした食感で、上には錦糸卵と牛肉のしぐれ煮、海苔、そしてさっぱりといただけるようにレモンや、ピリ辛の大根おろしが添えられている。
つけ汁はそばつゆをベースに、ほんのり甘みを加えたもの。
山口や九州方面の醤油は甘口で、特に刺身醤油の甘さは私の好みにぴったりだ。よく買って帰るほど気に入っている。
そして驚いたのが、ひつまぶしまであったこと。「ここでもうなぎが!」と思いつつ、海に近い土地柄を実感しながら美味しくいただいた。

もう一つ忘れられないのが、生ういろう。
奈良に住む私にとって、ういろうといえば名古屋が有名だ。でも山口で食べた生ういろうは、それをさらに上回る美味しさだった。
羊羹にくず粉を加えたような、つるんとした食感。
甘さは控えめで、羊羹ほど固くない。どちらかというとぷるるんとした固さに近い、さっぱりとした上品な味わい。
そして何より「生」ならではの特権として、蒸したてのわらび粉の風味が口の中でとろけるように広がる。
賞味期間が3日間だったので、たくさんは買えなかったけれど、家族へのお土産に少しだけ持ち帰った。
ういろう屋さんの喫茶スペースで、友人たちと一緒にお茶と共にいただいた時間も、かけがえのない思い出になっている。
新しい旅のかたち
私たちはつい、有名な場所や名所旧跡に目が行きがちだ。
でも旅の本当の価値は、友人と過ごす時間と、そこに添えられるおもてなしの心にあるのだと思う。
そのエッセンスが加わることで、「楽しかった」という思い出は何倍にも膨らんでいく。
帰ってきてからも、おもてなしをしてくれた友人たちに感謝の気持ちが湧き上がる。
それこそが、有意義な旅の証なのだろう。
ワークショップでの学びや気づきはもちろん大切だった。
でもそれと同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に、こうした何気ない交流が私の人生の大切な1ページを彩ってくれている。
山口で様々なプログラムを用意してくださった皆さん、心良く迎えてくださったスタッフの方々、改めてありがとう。

