ワークショップの翌日、コーチトレーニングの場での出来事です。
様々な経歴を持つコーチたちが集まり、今日のテーマは「効果的なコーチングの3原則」について語り合うことでした。
「効果的なコーチングの3原則」とは
双方向性、継続性、多様性。
ホワイトボードに映し出されたこの言葉を見た瞬間、私の頭は固まりました。
なんだか立派なことを言わなきゃいけない気がして、言葉が出てこない。
周りを見渡すと、みんなも同じようにもぞもぞしています。
そんな私たちの様子を見て、グループコーチが静かに問いかけました。
「そもそも『効果的』って、どういう意味だと思う?」
え…?効果的って、効果的でしょ?でも、改めて聞かれると…。
私はまた、もぞもぞし始めました。
コーチは、相手の答えをただ待つのではなく刺激を加える
するとコーチが、こんな例え話をしてくれたのです。
「風邪を引いて薬を飲んだとしましょう。でも風邪は治らなかった。その代わり、頭から毛が生えてきました。これって、効果的だと思う?」
その瞬間です。頭の中で何かが動き出しました。
まるで砂時計の砂が、するすると流れ落ちていくように。固まっていた思考が、さらさらと流れ始めたのです。
私たちはよく、問題の前で立ち止まってしまいます。
狭い通り道に、大きな塊のまま砂を通そうとして、詰まってしまう。でも、ほんの少しの問いかけが、その塊をほぐしてくれる。まるで魔法のように。
ゴールをコーチがちゃんと握っておかないと迷走する
私はまた考え始めました。
風邪を治したかったのに毛が生えた。これは効果的じゃない。なぜなら、その人が求めていたのは「風邪を治すこと」であって、「毛を生やすこと」じゃないから。
ああ、そうか。
目指す場所が明確じゃないと、どんなに頑張っても、そこにはたどり着けないんだ。もちろん、頭に毛が生えてきて、ラッキーだったと思う人もいるかもしれません。ですが、これは副産物なので、目的は達成されていないのです。
改めて目的の確認の大切さを感じました。
双方向性、継続性、多様性
では、効果的なコーチングをするための三原則って?
双方向性とは、上から「こうすべきだ」と教えるのではなく、対等な関係で、キャッチボールをしながら、「本当はどこに行きたいの?」を一緒に探していく。そうして、一緒に歩むことで、本当にありたい姿が共有できるのではないでしょうか?
そして継続性。薬を飲んで風邪が治っても、それが一時的なものだったら意味がない。
大切なのは、その状態がずっと続くこと。
根本から解決していくこと。
だから、一度の対話ではなく、継続的に向き合っていく必要があるんです。
最後に多様性。
もしかしたら、即効性のある薬があったとしても、それを飲みたくない人もいるかもしれない。漢方がいいという人もいるし、薬に頼らず生活習慣で改善したい人もいる。宗教や育った環境によって、大切にしているものは人それぞれ違う。
人は、みんな違う。それを受け入れることが、スタートラインなんだ。
その後、グループごとに分かれてディスカッションをしました。
そこでもまた、多様性が花開きました。言葉の意味から深く掘り下げるグループ、自分の体験談を語るグループ。どのアプローチも違って、どれも心に響きました。
私はふと思いました。
人はそれぞれ違う。その違いを認め合いながら、本当にありたい姿を一緒に探していく。
遠回りに見えるかもしれないけれど、それこそが、一番遠くまで行ける道なのかもしれない。
頭の中の砂時計が動き出したあの瞬間。
私はコーチングの本質を、体で理解した気がしました。
教科書には載っていない、人と人との間にしかない答え
このような体験は、グループでしか発見できないものです。
もし私が一人で本を開いても、そこには教科書通りの答えしか書かれていません。「双方向性とは相互のコミュニケーションであり…」「継続性とは持続的な関わりを意味し…」。正しいけれど、どこか遠い。頭では分かっても、心には届かない言葉たち。
でも、今日は違いました。
様々な経歴を持つコーチたちと同じ空間で時間を過ごし、一つのテーマについて言葉を交わし合う。
誰かの体験談に「ああ、そういうことか」と腑に落ちる瞬間があり、自分の考えを口にすることで、さらに考えが深まっていく。
人は、人との間でしか学べないことがある。
私にとって、このコーチトレーニングは本当に大切な時間なのだと改めて感じました。ワークショップの後、コーチだけで集まるこの時間。
ここには、教科書にはない、生きた学びがありました。
