「また増えてる…嘘でしょ、ああ…」
体重計に乗るたび、ため息が漏れる。
もう何度繰り返しただろう。
この憂鬱な儀式に慣れてくると、体重計に乗る足も自然と遠のいていく。
久しぶりに乗った際の体重計の数字が、私に無言の圧力をかけてくる。
と、同時に言い訳はすぐに頭の中を駆け巡る。
「年齢とともに代謝は落ちるものだし」「ぽっちゃりしてる方が若々しく見えるかも」「ガリガリより、私らしいでしょ」——そんな思いが、何度も頭の中をぐるぐると回っていく。
夏の誘惑
私の毎日は、本当に息つく暇もない。
朝は早起きして、キッチンの片付け、朝食の準備、身支度、仕事の段取り。
8時から午前中は仕事で、夏の暑い日差しの中、農場で汗だくになって働く。
昼になってようやく一息。
シャワーで汗を流すと、心も体もほっとする。
でも、その疲れを癒すのは、冷凍庫にあるアイスクリームやゼリー。冷たいものが、疲れた心を慰めてくれる。
夏の体重増加には、もう一つ大きな理由がある——イベントだ。
旅行先での食事、ドライブインや直売所での休憩は、旅の楽しみの一つ。
10日に一度の登山では、帰りに「ご褒美」と称する食事やデザートが待っている。
お盆の帰省ラッシュでは、親戚が持ってくる銘菓が仏壇に並ぶ。
その銘菓は、当然のように私の胃袋へと消えていくのです。
春の忙しい時期を終えて少し痩せても、夏になるとあっという間に元通り。いや、元通りどころか、さらに増えているのが現実だった。
続かないダイエットの日々
新しい運動を試したり、様々なダイエット法を試みたりするものの、どれも長続きしない。
• 美味しくないものは続かない
• サプリメントは薬を飲んでいるようで気が進まない
• こんなに暑い中、運動する気になれない
• スポーツジムは車で20〜30分もかかる
田舎暮らしゆえ、移動はすべて車。
コロナ以降はオンラインでの仕事も増え、動くことがさらに少なくなった。時短にはなったけれど、体を動かす機会は確実に減っていった。
「楽しく運動できて、楽しく食べながら痩せられたら、どんなにいいだろう」
心からそう思った。
気づきの瞬間
都会に出かけると、自然と歩数が増える。
駅から目的地まで、地下街の散策、駅構内の階段の上り下り——気づけば相当な距離を歩いている。
でも、疲れた感じはしない。
移動中に立ったり座ったりが自然に組み込まれているからだろう。
一方、田舎での移動は車頼み。
玄関を出てから、どんなに遠くまで行っても座りっぱなし。
のんびりした日曜日なんて、せいぜい2,000〜3,000歩。犬の散歩を含めても、この程度だ。
「これじゃ太るはずだわ」
そう思い始めたのが、今年の春だった。
小さな一歩から
スマートウォッチをつけて、1万歩確実に目指すことにした。
でも、いきなり1万歩は無理だ。
まず、朝一番の犬の散歩で2,000歩。これは面倒でも、犬がせがむし、お互いの健康のため。「やりたい」というより「仕方ない」で続けられている。
仕事中に3,000〜4,000歩。気づけば6,000〜7,000歩は歩いている。
「あと2,000〜3,000歩なら簡単では?」と思うものの、これがなかなか難しかった。夕方の散歩は主人がやってくれるし、仕事が終わった後は動きたくない。
転機——温泉のウォーキングマシーン
どうしようかと悩んでいた時、毎日通っている温泉施設にランニングマシーンがあることに気づいた。
「これで早歩きすれば、最後の詰めができるんじゃない?」
この温泉ウォーキングは、私にとても良い効果をもたらした。
• お風呂の前に汗をかいても、すぐに流せる
• クーラー完備で、天候に左右されない
• 月の定期券内で追加料金なし
この習慣が2〜3週間続くと、ほぼ定着し最後の砦になってきた。
時間がなくても、まず20分のウォーキング。その後、お風呂の時間で調整すればいい。
続けるコツ
ウォーキングマシンで1万歩は無理だ。
20〜30分で飽きる。景色も変わらないし、単調だから。
でも20分なら、テレビやYouTubeを見ながらなんとかいける。
大切なのは、1万歩を一度にやろうとしないこと。
• 朝:犬の散歩で2,000歩
• 昼:仕事で3,000〜5,000歩
• 夜:温泉で2,000〜3,000歩
朝昼晩とまんべんなく動けば、負担に感じない。
山や旅行に出かけた日は、たくさん歩くから、温泉ではのんびりお風呂を楽しめばいい。それがご褒美だ。
食事も同じ発想で
毎日、卵、鶏ささみ、納豆ばかりでは飽きてしまう。食の楽しみもない。
私は冷蔵庫に常備して、タンパク質が足りないと思った時に使うようにしている。
• チャーハンにハムの代わりに鶏ささみ
• カレーに納豆や卵をトッピング
• コーヒーに豆乳やオーツミルク
生活のあちこちに、こういったものを自然に取り入れる。これが継続の鍵だと思う。
リバウンドとの付き合い方
目標体重に達したり、少し痩せたりすると、つい気を緩めてしまう。
甘いものを再開したり、ドカ食いしたり。
でも大事なのは、早めに軌道修正すること。
ぎっくり腰は急になったものだから、早めに休養すれば回復も早い。でも、10年20年の慢性的な腰痛は、1週間では治らない。体のバランスがそちらに合わせようとしているから。
ダイエットも同じ。
リバウンドはきっと繰り返す。だからこそ、「もうダメだ」と諦めずに、早めに元に戻す努力が必要だ。
そして、リバウンドを避ける仕組みも並行して考えていく。生活の中に、ちょっとした運動や食事の工夫を忍び込ませる。
すぐにはできないかもしれない。でも、人の話を聞いて良さそうだと思ったら試してみる。その中で続けられそうなものを、生活に取り入れていく。
そうやって、少しずつ生活リズムが変わっていくんだと思う。
万博での1日 2,200キロカロリーの教訓
この夏、娘と万博に出かけた。
カロリー計算したら2,200キロカロリー超えで、2人で大笑いした。
その日の1日はこんな感じでした。
朝はタンパク質中心の食事。
万博では食事が取りにくいと思い、家でサンドイッチを作っていった。手作りサンドイッチは美味しい。娘と2人でパクパク食べた。
でも、暑さと案内してくれた友人の勧めでカンボジア館のデーツースムージー、フランス館のクロワッサン、ソフトクリーム——かなりのカロリーオーバー。
夜は2万歩以上歩いてぐったり。電車の乗り換え駅のロッテリアで、ハンバーガーとポテトのセットが夕食になった。
これだけカロリーを摂っているのに、食べたという満足感はなかった。
きちんとした食事がなかったからだ。
でも、こういうことは外出すると起こりうる。
あすけんアプリのAIがこう言っていた。「食べるのはいいですが、この状態が続くと体重の増加につながる恐れがありますので、続かないように気をつけてくださいね」と
ああ、なるほど。
確かに、これを長期的に続けていたら、カロリーオーバーになる。
でも、あり得ない話でもないし、人生を楽しむにはこういったイベントも大事ですよね。
終わりに
一生続けられるダイエットとは、特別なことをすることじゃない。
生活の中に、無理なく健康的な習慣を溶け込ませること。
完璧を目指さず、できることから少しずつ。
そして、楽しみながら。
それが、人生を楽しみながら健康でいる秘訣なのかもしれない。