いつかはこの世から人は居なくなる。
当たり前のことですが、日常においては、そのことを考えるのをつい後回しにしてしまいます。
今日は、90歳を目前に控えた父親が亡くなった後の遺産相続について、今後自分がどう取り組むのかについて書いてみたいと思います。
パーソナルファンデーション合宿にて
8月の週末、湯河原温泉で1泊2日のパーソナルファンデーション合宿に参加してきました。
コーチとして、また経営者として、そして妻・母として、様々な役割を担う中で、自分自身の考え方や感情にしなやかに対応できる能力を身につけたいと常々考えており、定期的にこのような自己成長のための合宿に参加しています。
コーチングという手法を使えば目標達成やビジョン実現に向かって進むことはできますが、そもそも「自分がどう生きたいのか」「トラブルが起きた時にどう対応できるか」といった根本的な自己の基盤力を備えることが重要だと感じているからです。
「トラブルを起こさない仕組みづくり」
今回の合宿では、パーソナルファンデーションの10の柱から少し離れ、「トラブルを起こさない」というテーマに1日かけて取り組みました。
これは、トラブルが起きてから対処するのではなく、トラブルのない状態を仕組みとして作るという考え方です。
日常生活での例
トラブル防止の仕組みは、実は私たちの日常に数多く存在しています。
• 健康管理:病気を予防するための日々の健康的な生活習慣
• 口腔ケア:虫歯を防ぐための食後の歯磨き
• 時間管理:焦りによる事故を防ぐための余裕を持ったスケジュール
• 金銭管理:経済的困窮を避けるための計画的な貯蓄
トラブルの根本原因
トラブルが起きる背景には、時間と空間(余白)の不足が大きく関係しています。
• 時間不足:焦りから転倒や交通事故につながる
• 空間不足:気持ちの余裕がなくなり、判断力が低下する
• 金銭的余白の不足:その日暮らしの生活で常にストレス状態になる
パーソナルファンデーション学習後の変化
パーソナルファンデーションを学んでからは、トラブルの本質を理解し、未然に防ぐ方法に注力してきました。
具体的には以下の点を意識するようになりました。
- 気になることの明確化:何が問題なのかを具体的に把握する
- 責任の所在の明確化:自分の問題か、他人の問題かを切り分ける
- 影響度の評価:その問題がどの程度の影響を及ぼすかを判断する
この取り組みにより、現在は大きなトラブルもなく過ごせるようになりました。
父親の遺産相続問題
せっかくの良い機会なので、これまで臭いものに蓋をするように避けてきた重要な問題と向き合いました。
それは、90歳を目前に控えた父親が亡くなった後の遺産相続についてです。
家族構成と現状
私には妹と弟がおり、3人兄弟です。現在、弟が父と同居しており、私的には、家は弟が継ぐものと考えていますが、法的には相続権は1/3ずつとなります。
予想される問題
• どんなに少額でも遺産相続では揉めるだろうという予想
• 人間の欲深さ:法的にもらえるものは欲しいという心理
• 兄弟姉妹の経済状況が不透明
• 家の相続と現金の分配方法
これらの問題を「なんとなく」先送りにしていました。
「人生会議」という解決のヒント
合宿では、この問題を10分間のグループディスカッションで扱ったところ、あるコーチから「人生会議って知ってる?」というアイデアが出されました。
人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)とは
厚生労働省が推進している取り組みで、自分が望む医療やケアについて前もって話し合っておくことを指します。
背景
• 高齢化により「自分の希望を伝えられなくなる」状況が増加
• 本人の意思が分からないと、家族や医療者が困難な選択を迫られる
• 元気なうちから話し合っておくことの重要性
話し合う内容の例
• 自分が大切にしている価値観(自宅で過ごしたい、自然に任せたい等)
• 希望する医療や介護の内容
• 代理意思決定者の指定
メリット
• 本人の希望に沿った治療・ケアが可能
• 家族の精神的負担の軽減
• 医療者との信頼関係構築
遺産相続への応用
この「人生会議」の考え方を遺産相続に応用すると、父が元気なうちに、治療方針や財産分与について兄弟を交えて話し合っておくことが出来ない状況にあるとしても、父親の意志を録音や書面に記載することも有効だと気づきました。
もちろん、法的効力が無いとしても、そんな話し合いが少しでも出来たら、少しずつ父がどう今後過ごしたいのかが見えてくるのでは無いかと思っています。
新たな気づきと決意
これまで父は「死ぬ間際にならんと何もわからんわ」と話をそらしていましたが、明日起こるかもしれないし、十数年先かもしれない出来事に対して、今の考えを残しておくことの重要性を感じています。
期待される効果
• いつ起こるかわからない不安への対応
• 周囲への不安軽減
• 自身の不安の軽減
今後の取り組み方針
- 継続的な対話:1〜2回で明確な答えが出るわけではないため、父が元気なうちに繰り返し話し合う
- 家族全員の参加:兄弟姉妹を交えた話し合いの機会を作る
- 段階的なアプローチ:急がず、少しずつ話を進める
おわりに
高齢になると面倒なことを先送りしたくなる父親の気持ちは理解できますが、法的な公平性だけでは解決できない家族それぞれの思いや事情があります。
コミュニケーションを学んでいる私にとって、これは一つの試練かもしれません。
亡くなった母が与えてくれた人生をステップアップするハードルだと捉え、徐々に取り組みたいと思うようになってきました。
今回の合宿を通じて、「トラブルを未然に防ぐ」ということの本質的な意味を、表層的な問題もさることながら、こういった自分の心の深い部分にあった気がかりにも、自分の心の中を少し覗いたり、手で触ってみたり、もみほぐしてみたりするきっかけとなり、軽やかに生きるひとつなんだと理解することができました。
避けてきた問題と向き合う勇気を得られ、今まで蓋をして自分の背後に置いて見えないようにしていたことが、少しだけ覗いて取り組んでみようと思えたことが今回の収穫でした。
人とお金が絡んでいる場合、スッキリ解決とはなかなかいかないものですが、ともあれ、どこか無意識に張り詰めていた気持ちが緩んだ感じがしています。お互いに、急がず、少しずつ話を進めていこうと思っています。