「ママ合格したよ!」と、娘の念願だった薬剤師国家試験合格を勝ち取ったのは、もう3月も終わろうとしている春でした。
ようやく、高校から薬剤師を目指し、大学へ。そして、6年間の薬剤師としての勉強を経て、9年間という長かった受験勉強が終わりを告げました。
娘は、この9年間に少女から大人への階段をひとつずつ登り始め、ブレることなく薬剤師という専門職に就くことができました。
今日は、この1年間、国家資格合格に向けて、親としてやってきたことについて書いてみたいと思います。
大学生になった子供をどう扱うか
特に、ここ1年は娘が下宿している京都から実家に戻ってきたので、一緒に過ごすことが多くなり、受験生の娘と関わることが多くなりました。とは言え、すでに立派な成人をしている娘です。
高校受験までは、学校や塾の送り迎えや、お弁当など母として当たり前のことはやってきましたが、さすがに成人した大人になるとさほど母としてできることはないように思われました。
というのも、この年齢になってくると、受験に落ちたら、かなりの費用がかかり、1年間再受験のために時間もお金も無駄になるということは、彼女の中でもしみじみ理解していましたし、6年間、薬学部の授業料を親が負担するだけでも大変であるということも理解していたと思います。
私たち夫婦には子供が3人おりますが、大学生になれば学費は親が出すが、それ以外の生活費や支出に関しては、一切私たちは面倒を見ないと決めていました。確かに学費においては、奨学金制度というのはありますが、できるだけ子供たちが一人前になったときに借金という負担はさせてあげたくなかったですし、もし奨学金制度を狙うなら、返済がないものを狙いなさいと常々伝えていました。
確かに大学生になれば勉強は大変ですが、もし子供たちが頭が良くて、奨学金制度を狙えるならば働くよりもより多くの収入が得られると考えていました。とは言え、ひとえに、奨学金制度と言っても、やはりそれなりの受験勉強を勝ち抜いた子供たちが、さらにそこから奨学金をもらうために成績を競い合うのですから、大変なことは充分承知しています。
なので、それぞれの子供たちは、自分たちの能力に応じてアルバイトをしたり、大学生のうちからお金を稼ぐために起業をしていました。
ですから、私たちは親としてお小遣いをあげたことも衣服を買ってあげたこともなかったのですが、それなりにそれぞれがうまくやっていました。
とは言え、娘にとって、さすがに6年目に入ったら、薬剤師の受験勉強では、アルバイトの収入による下宿先での生活は非常に困難になってきました。そこで、最低限の出席とかで必ず受けないといけない授業を除いてほとんど実家生活をしていたのです。
親としてできること
親として出来ることと言えば、とりあえず勉強できる環境を整えること、しかありません。
さすがに、勉強する姿勢は既にこの9年間で身についていたので、集中できる勉強部屋を準備しました。
そして、春から1年間の受験勉強が始まったわけです。
実は、家から大学までは電車で2時間以上かかり、一日の移動距離だけでも、5時間になります。勉強にあたって、かなりの時間ロスとそれに伴う体力のロスがありました。
なので、娘は、6年生に行われる国家試験対策のゼミに参加しないことを決めたようです。
まぁ、実際授業料を払っていたから、親にすればもったいない!とは思ったのですが、確かに、家からそれを受けに通うことで、かなりのロスがあるとは明白でした。加えて、ひとり暮らしだと、どれだけ切り詰めても最低限の生活費はかかりますので、ならば、必要な時に下宿先に帰る方法をとって、アルバイトも減らしていました。
ということで、大学生活6年目の春からまた一緒に暮らし始めたのです。
一緒に暮らし始めて、負担が増えたことは、洗濯物と食費でした。
食事については、私が作ったものを文句言わずに食べていたので、さほど作ることに対して嫌ではなかったのですが、やはりひとり口が増えるとスーパーで買う回数が多くなりました。特に、水、コーヒー、牛乳などの飲料がグッと増えました。
多分、勉強の合間にかなりのコーヒーを飲んでいたと思われます。
良かったことは、娘との会話が増えたことです。当たり前ですが、、、。
よく私の友達が家に遊びに来ると、それを機に一緒に出かけたりしていました。
これが、お互いを理解する上で、良きコミュニケーションの場になっていましたし、娘にとっても良い息抜きになっていたと思います。
受験生としての生活リズム
とはいえ、娘も受験生です。さすがに、大学の国家試験対策ゼミをブッチして、家にいる以上、それなりの結果を出さないとと思っていました。そこで、手始めに、25分の集中勉強を1週間に40時間することを目標にしていました。なので、一日平均して、6〜7時間勉強していたようです。
そして、その間は、タイムログをとっており、40時間勉強できたあかつきには、週末、一緒に出かけていました。
当初は、お買い物を楽しむことなどでしたが、それでは、長続きがしません。
丁度その頃、わたしは体力作りのために登山を始めていたので、息抜きに簡単な山へ行かないか?と誘ってみました。
毎日娘を見ていると、確かに勉強は確実にできているものの、家にいることで、メリハリがない生活のように感じました。また、「脳を鍛えるには運動しかない」という、本の中で、身体を動かすことが、受験勉強にとってとても大切だとあり、私も睡眠と運動に関しての重要性は十分理解していました。
娘は、以前、下宿先の1DKのマンションで勉強をしていたのですが、カーテンを閉めて、エアコンをつけっぱなしなので、いつが夜か昼かさえわからなくなってると言ってたことを思い出したからです。
なので、
– 朝一定の時間に起きて、朝日を浴びる。
– ちゃんとした食事をとる。これは豪華なものではなく、加工品の少ないご飯や味噌汁、豆腐、納豆など簡単に食べられるけど、ファーストフードやインスタント食品、菓子類ではないものです。
– 身体を動かすことで、心地よい疲労感を意図的に作り、睡眠をきっちりとる
ということを、推奨する一環でした。
効果は、絶大で、毎週の一緒に登山とその後の買い物やランチを楽しみにしていましたし、登山といっても散歩に毛が生えたような山でも、体力の確認とぐっすり眠れるサイクルができてきているようでした。
更に、毎日の勉強で肩こりや頭痛が起こりやすかったのですが、夕方から夜にかけて、温泉に一緒に行くことで随分と和らいだようです。
夏以降は、勉強を週50時間に延長したので、流石に一緒に登山に行くこともなくなりましたが、それでも、最後の砦である、温泉に行くことだけは、続けたようです。
また、登山に行けなくなってからは、随分と体力が落ちたことに悲しんでいましたが、致し方ありません。なので、とにかく、夕方の犬の散歩の時間を少し長くしたり、温泉にあるランニングマシーンに乗って、早歩きを続けていたようです。
心身の健康を保つことの大切さ
これが、受験にとってどのような効果を表したかどうかわかりませんが、少なくとも、学校に行くと、精神的不調で病院にかかっている友人や、模擬テストを受ける際のお昼休みですら、声をかけないでモードの余裕のない学生が月を追うごとに増えていったことに、娘も私も驚いていました。
実際、合格発表後、同じ実習生でかつ自分よりも賢いであろう他校の学生さんに合格を研修先に報告をしようと決めていたので、連絡をとったところ、1月から精神的不調で受験すらできなかったと聞いて、驚愕しました。
うちの娘も、一人で下宿先で勉強していたら同じようにならなかったとは否定できません。
とにかく、娘は、確実に早めからコツコツと勉強時間を積み重ね、最後は、どちらかというと自分のペースでのんびりと勉強していたという感じでした。
人には、スタートダッシュやペースが様々なので、どれが自分にとって最善の方法かは自分の成功体験に基づいて、勉強方法を立てていけば良いのですが、この1年間に至っては、とにかく、運動を取り入れ、朝夕のリズムをしっかりとっていくことが大事と親としてアドバイスできたことは良かったと思っています。
終わりに
振り返ってみると、これだけお互いが充実した時間を持てたことにとても感謝しています。
そして、この経験がこれから関わっていくであろう患者さんなどの地域社会に対して、彼女らしい価値を提供し、還元できることを切に願っています。
私としても、こうやって巣立っていった娘の自分らしい生き方を今後も応援してあげようと思います。
と、同時にこれからは、娘の為ではなく、娘に負けないよう自身の目標を叶えていくことが子供達に対しての姿勢だと重ねて思いましたし、この経験がコーチとして皆さんのお役に立てることを願っています。